
「なぜ私はいつも同じパターンで人間関係が破綻するのだろう?」
42歳の田中さん(仮名)は、何度カウンセリングを受けても、職場での人間関係や恋愛関係で同じような問題を繰り返していました。頭では「相手を信頼したい」と思うのに、いざという時に疑心暗鬼になってしまう自分がいる。この原因を知りたくても、幼少期のことはほとんど思い出せませんでした。
そんな田中さんが【中野式】心理療法で体験したのが「治療的退行」という方法でした。
大人の愛着障害の根本原因が見えない理由
大人の愛着障害を克服する最初のステップは、その根本原因を知ることです。しかし、愛着障害の原因は主に乳幼児期(0歳から3-4歳頃)にあるため、ほとんどの人が思い出すことができません。
これは「幼児期健忘」と呼ばれる現象で、3-4歳以前の記憶は通常の方法では想起が困難とされています。さらに、愛着に関わるトラウマ的な体験は、心を守るための防衛機制によって、意識の奥深くに封印されていることが多いのです。
つまり、愛着障害で苦しんでいる多くの方が「原因はわかっているはずなのに、思い出せない」というジレンマを抱えているのです。
治療的退行とは何か?
そこで有効なのが「治療的退行」という心理療法の概念です。
治療的退行とは、安全で統制された環境の中で、一時的に心理的に幼い状態に戻ることによって、封印された記憶や感情にアクセスすることです。これは「よい赤ちゃんがえり」とも表現できます。
重要なのは、これがセラピストとクライアントとの合意の下に行われる「治療的」なプロセスだということです。ただ単に退行するのではなく、心の回復と成長を目的とした、安全で建設的な退行なのです。
悪性退行との決定的な違い
治療的退行を理解するために、まず「悪性退行」との違いを明確にしておきましょう。
悪性退行の特徴:
- 大人が無意識に感情的に不安定になる
- 責任を放棄し、他人に依存する
- 感情のコントロールができなくなる
- 建設的な目的がない
- 周囲の人を困らせる
治療的退行の特徴:
- セラピストとクライアントとの合意の下に行われる
- 明確な治療目的がある
- 安全で統制された環境で実施
- 一時的で可逆的なプロセス
- 最終的に大人としての成長を促進
治療的退行は、まさに悪性退行の正反対の性質を持っています。目的は依存することではなく、自律と成長なのです。
治療的退行で何が起こるのか?
適切に治療的退行を体験すると、以下のようなことが起こります:
感覚の記憶の回復
乳幼児期の感覚や感情の記憶が蘇ってきます。これらは言葉の記憶ではなく、身体感覚や情動として現れることが多いです。
愛着パターンの原点発見
現在の人間関係の問題につながる、最初の愛着体験を再体験することができます。
潜在意識レベルでの気づき
頭で理解するのではなく、心の深い部分で「ああ、これが原因だったのか」という腑に落ちる体験が得られます。
感情の解放と統合
長い間抑圧されていた感情が安全に解放され、新しい視点で統合されます。
冒頭の田中さんの場合、治療的退行の体験を通じて、2歳頃に母親が長期入院していた時期の記憶が蘇りました。その時の「見捨てられる恐怖」が、現在の人間関係での疑心暗鬼の根本原因だったのです。
治療的退行を体験する際の重要な注意点
治療的退行は非常に強力な技法であるため、以下の注意点を守ることが不可欠です。
1 必ず適切な訓練を受けた治療者のもとで行う
自己流や無資格者による実施は危険です。専門的な知識と技術が必要な技法です。
2 十分な信頼関係の構築が前提
治療者との強固な信頼関係なしには、安全な退行は不可能です。
3 段階的なアプローチを取る
いきなり深い退行を目指すのではなく、徐々に慣らしていくことが重要です。
4 アフターケアの重視
退行体験後の統合プロセスが非常に重要です。十分なフォローアップが必要です。
5 個人の準備状態を見極める
すべての人がすぐに治療的退行を体験できるわけではありません。個人の心理的準備状態の見極めが必要です。
【中野式】心理療法における治療的退行の活用

【中野式】心理療法では、治療的退行を「3つのケア」の中の「トラウマケア」の一部として位置づけています。
メンタルケア(交流分析) → トラウマケア(催眠療法・治療的退行) → スピリチュアルケア(前世心理療法)
この統合的なアプローチにより、顕在意識と潜在意識の両方に働きかけ、愛着障害の根本的な解決を目指します。
26年間で3,500人以上の実績の中で、治療的退行を適切に活用することで、従来の方法では改善が困難だった大人の愛着障害が、より短期間で根本的な改善される事例を数多く経験しています。
まとめ:安全で効果的な愛着障害克服への道
治療的退行は、大人の愛着障害を克服するための有効な手段の一つです。ただし、それは適切な専門家のもとで、安全に実施される場合に限ります。
もしあなたが「愛着障害の原因を知りたいけれど思い出せない」と感じているなら、治療的退行という選択肢があることを知っておいてください。それは決して危険な「赤ちゃんがえり」ではなく、心の成長と回復を促進する建設的なプロセスなのです。
大人の愛着障害は、適切なステップを踏めば、必ず改善できます。一人で抱え込まず、専門家と一緒に、あなたの心の回復への道を歩んでみませんか?











