中野 日出美です。
【中野式】心理療法の理論的背景を説明します。
フロイトは、古典催眠を学んだ後、覚醒技法を用いる精神分析を提唱しました。
その弟子のフェダーンが自我状態の理論を唱え、それを覚醒技法として発展させたのが、バーンの交流分析で、催眠技法として発展させたのが、ワトキンス夫妻の自我状態療法です。
交流分析とは?
交流分析は、カナダ出身でアメリカで活躍した精神科医エリック・バーン(1910-1970)により提唱されたパーソナリティや対人コミュニケーションについての心理療法理論です。
交流分析には、大きく分けて4つの理論があり、中でも重要なのは「自我状態の構造モデル」と「人生脚本」の2つの理論です。
「自我状態の構造モデル」とは、フロイトの弟子のフェダーンが提唱した自我状態の理論に基づくものです。
バーンは自我状態を「感情と体験のまとまったパターンで、それに直接対応する行動パターン」と定義しました。
次に「人生脚本」について、バーンは
「幼児期の決断に基づく人生計画で、両親の影響によって強化され、引き続き起こる重大な出来事によって正当化され、自分の選択によって最高潮に達して終わるもの」
と定義しました。
交流分析は、国や大学でも活用されています。
例えば、厚生労働省による働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、「15分でわかるはじめての交流分析」という学習プログラムで学べます。
また、東京大学医学部心療内科TEG研究会では、東大式エゴグラム TEG3を、交流分析理論に基づいたパーソナリティ検査として開発しています。
交流分析と併用して、トラウマケアのために、もう一つ別の心理療法の理論を応用しています。
それは、自我状態療法です。
自我状態療法とは?
自我状態療法は、アメリカの心理学者であるジョン・G・ワトキンス博士(1913-2012)と、心理療法家のヘレン・H・ワトキンス(1921-2001)により、提唱されました(注)。
自我状態療法は、先ほどもお話したように、複雑性PTSDの場合に、EMDRと併用する心理療法として、改めて注目を浴びているようです。
自我状態療法は、交流分析と同じく、フロイトの弟子のフェダーンの自我状態の理論に基づいています。
ワトキンス夫妻は、
「自我状態療法とは、個人療法や家族療法、集団療法のテクニックを、一人の人の内部で「自己の家族」を構成している異なる自我状態間の葛藤の解決に利用するものである。たいていは催眠下で行われる」
と述べています。
【中野式】心理療法は、催眠下で交流分析の理論と技法を利用し、異なる自我状態間の葛藤の解決を図ります。
そのため、自我状態療法の1種と考えられます。
【中野式】心理療法の理論的な背景とは?
私は、2011年に、交流分析の理論を催眠下での複数の自我状態の交流の分析にも適用できる方法論を、独自に開発しました。
これが【中野式】心理療法の理論的背景です。
このように開発された方法論により、覚醒技法と催眠技法のいずれでも、交流分析の理論が適用可能となりました。
スピリチュアルケア心理療法や愛着再形成療法の理論的な基盤を確立できたのです。
また、これにより、意識と無意識をつなぐ【中野式】心理療法のプロセスも確立できました。
(注)出典:ジョン・G・ワトキンス、ヘレン・H・ワトキンス 著、『自我状態療法 理論と実践』