5日間で学ぶ「大人の愛着障害」を克服する集中講座(2日目)

【2日目】あなたの「生きづらさ」の本当の正体

今日の世界一わかりやすいまとめ
  • あなたの心は、実はスマホのシステムとよく似ています
  • そして「生きづらさ」の本当の理由は、このシステムの土台である「OS(基本ソフト)」が古いことが原因です
  • このOSは幼い頃に自動で作られたものなので、あなたの性格や努力のせいではありません
  • 子どもの頃はOSを選べませんでしたが、大人になったあなたには、OSを安全にバージョンアップする力があります

こんにちは!

公認心理師の中野 日出美です。講座の2日目へようこそ!

前回は、私たちの「生きづらさ」の根源に「愛着」の問題があること、そして愛着にはいくつかのタイプがあることをお伝えしました。

もし、まだ愛着スタイル・セルフチェックを試していない方がいらっしゃいましたら、ぜひこの機会にやってみてください。ご自身の傾向を知ることが、大きな第一歩になります!

そして、もしチェックの結果が「不安定型」だったとしても、どうか心配しないでください。

不安に感じた方もいるかもしれませんが、それは当然のことです。

そして、この講座は、まさにそんなあなたのためのものです。

なぜなら、その「不安定さ」は、あなたの性格や努力の問題では決してないからです。

今日は、その本当の理由を、世界一わかりやすく解き明かしていきます。

読み終わる頃には、きっと心が少し軽くなっているはずですよ。

では、なぜあなたの性格や努力の問題ではないのでしょうか?

全ての鍵は、幼い頃に作られた「人生の土台」にあります。

安心感の欠如が、人生の土台を崩す

幼い頃に親との関係で十分な安心感を得られなかった場合、この土台が不安定なまま残ります。

そして、この「不安定な土台」が、大人になった今もあなたの心にどう影響しているのか?

それを理解するために、とても分かりやすい例え話をしましょう。

心のシステム:スマホで考えてみる

この「不安定な土台」がどのように働いているのか、スマホを例に考えてみましょう。

スマホに画面をタッチしたり、音声で話しかけたりすると(刺激)、スマホの中で何かが起こって、結果が画面に表示されたり、音声で案内されたりします(反応)。

私たちの心も、実は同じようなシステムで動いています。誰かに怒鳴られたら(刺激)、怖くなったり、逃げたくなったりします(反応)。

この刺激と反応は、心と身体がつながって働くことで生まれます。

心とスマホ

人間もスマホも3つの層からなるシステム

スマホは3つの層からできています。

  • アプリ:ゲームやSNSなど、自分でインストールして使うもの
  • OS(基本ソフト):アプリを動かす土台。iOSやAndroidなど最初から組み込まれています
  • 本体(ハードウェア):液晶画面や電池、カメラなど、物理的な部分

同じように人間も3つの層に分けて考えることができます。

  • 顕在意識(理性):「こうしよう」と考えて意識的に決めて働く機能
  • 潜在意識(感情や記憶):無意識に反応している機能
  • 身体(生理):心臓の鼓動や呼吸など、自動的に働く機能

上から順に、それぞれが、スマホの「アプリ」、「OS」、「本体」に対応すると考えられます。

頭・心・体の3つの層
3つの層 解説 スマホの例え
顕在意識(理性や判断など) 「頭」や表面的な「心」の働きです。「もっとポジティブになろう」「今度こそ、あの人と上手くやろう」と意識的に努力できる部分です。 【アプリ】

新しい知識やスキルを学ぶのは、新しいアプリをインストールするようなもの。簡単に入れ替えできます。

潜在意識(感情や記憶など) 「心」の深い働きです。感情のクセや、とっさの反応、人間関係の無意識なパターンなどがプログラムされている部分。普段は意識できません。 【OS(基本ソフト)】

全てのアプリを動かす土台。最初から組み込み済み。自分の意向では、設定を簡単に変更できません。

身体(神経や生理など) 「身体」とその調整です。心臓の鼓動や呼吸、緊張した時の汗など、生命を維持する自動的なシステムです。 【本体(ハードウェア)】

スマホそのもの。バッテリーやCPUなど、物理的な機械や部品です。

人間はスマホよりも、ずっと複雑なシステム

ただし、当然ですが、人間はスマホよりも、ずっと複雑です。

スマホのような機械は、感情や感覚はありません。

しかし、人間には、感情や感覚があるので、「アプリ」「OS」「本体」のいずれかに不具合があると、辛さや痛みを感じます。

また、スマホのOSは、技術者が作ったものなので、そのプログラミング・コードを見れば、バージョンはいくつなのか、どんな内容なのかがわかります。

一方、人間の「心のOS」は、無意識レベルにあるので、内容を見ることはできませんし、バージョンが古いのか、新しいのかすら、本人でも確認ができません。

「心のOS」はいつ作られるのか?

赤ちゃんの頃は、まだ言葉も話せず、理性も発達していません。

つまり、顕在意識(理性)が発達する前は、潜在意識しかありません。

泣く赤ん坊

この時期に、親との関係で経験した不安定な体験は、「世界は危険だ」「私は愛されない」という心のルールとして、潜在意識、つまり「心のOS」に記憶されます。

これが、今も働き続けている「古いOS」なのです。

重要なのは、このOSは、あなたが言葉を覚える前の、その環境で生き延びるために最も合理的だった心のルールだということです。それは無意識のうちに、自動的に作られました。

これまでのアプローチの限界

では、なぜこれまでの様々な努力が、根本的な変化につながらなかったのでしょうか?

カウンセリングや、自己啓発の本を読んだり、セミナーを受けたり、コミュニケーション・トレーニングを受けたりすることで、スマホにアプリをインストールするように新しい知識やスキルを身につけられるかもしれません。

しかし、それはOSをバージョンアップするのとは違います。

古いOSのままだと、最新のアプリを入れても、動かなかったり、反応が遅くなったり、急に落ちてしまったりします。

また、身体をケアすることは、スマホの部品(カメラやバッテリー)を新しくするようなものです。しかし、OSが古ければ、根本的な問題は解決しません。

なぜOSは簡単に入れ替えられないのか?

「それなら、OSを新しくすればいいじゃないか」

そう思うかもしれません。

しかし、OSはアプリのように簡単に入れ替えることはできません。

なぜなら、もしOSを間違って入れ替えてしまったら、スマホ自体が起動できなくなる可能性があるからです。

スマホのOS

人間も同じです。

「心のOS」を簡単に変えられてしまったら、生命の維持ができなくなるという、とても大きな危険を伴います。

だから、心は無意識のうちに、「心のOS」を守っているのです。

それが、たとえいくら古くても、今の状況では快適に動かなくなっていても、その「心のOS」を使って、今まで生きてこれた実績があるからです。

つまり、あなたの心は、あなたを守ろうと必死で「古いOS」を維持しているのです。変わることに抵抗があるのは、それが生命を守るための自然で、健気な反応とも言えます。

これが、「頑張っても変われない」本当の理由です。

大人の愛着の問題の核心

愛着の傷は、言葉を覚える前の「心のOS」に記憶されています

あなたが「ポジティブに考えよう」と理性で新しいアプリを動かそうとしても、心のOSが持つ「生存のための古いルール」がそれを阻みます。

そして、その「心のOS」は、あなたの生命を守るために、簡単には変えられないように保護されているのです。

これが、大人の愛着の問題の核心です。

しかし、ここからが最も重要なポイントです。

子どもの頃は、OSを選ぶことはできませんでした。でも、大人になったあなたには、そのOSを安全にアップデートしていく力があります。

裏を返せば、この「心のOS」さえ書き換えられれば、長年の苦しみは解決できるということでもあります。

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